ご家族の思い出の品を、ホコリ一つつけないよう丁寧に包み、一番安全な奥の棚へしまう。
その行動は、愛情の深さそのものです。
しかし、その深く美しい愛情こそが、良かれと思って重ねた工夫が、いま目の前にいるご家族が手足を伸ばしてくつろぐための広さを少しずつ小さくしていることに、お気づきでしょうか。
大切な品を何重にも包み込む、その深い愛情について
箱を一番安全な奥へしまうことで守られているもの
お子様が初めて使った小さな靴や、一生懸命に作ったお遊戯会の衣装。
ご家族の歩みを大切にするからこそ、家の中に専用の場所を作り、一つひとつ箱に収めていくのは本当に素晴らしいことです。
その優しさは、ご家族の歴史を何よりも重んじている証拠です。
しかし、丁寧に積み上げられた箱が増えていくと、家の中は少しずつ、静かに物で埋まっていきます。
世界保健機関(WHO)が2018年に発表した『住まいと健康に関するガイドライン』でも、お部屋の中にモノが山のように積み上がっていくと、そこで暮らす私たちの心と体がぎゅっと縮こまってしまうと、優しく教えてくれています。
お子様の成長の証を捨てることは、決してできません。
だからこそ、空いている隙間を見つけては丁寧に箱を収める。
その素晴らしい工夫を重ねるほどに、家の中の自由に歩ける場所が少しずつなくなっていくという事実があるのです。
論拠WHO Housing and health guidelines(住まいと健康に関するガイドライン) | 世界保健機関(WHO)
完璧に守り抜く毎日が、少しずつ見えなくしてしまうもの
毎回手前の荷物を動かすという、大きすぎる労力
大切な品をきれいなまま保ちたいという思いは、尊いものです。
しかし、傷つけないようにと何重にも丁寧に包む優しさが、結果としてその品物を日常のなかで笑顔で楽しむ機会を遠ざけてしまうことになってはいないでしょうか。
目に入る箱や大きな棚が増えすぎると、私たちは無意識のうちに『ぶつからないようにしなきゃ』と気を張ってしまい、目の前にいるご家族の笑顔をゆっくり見つめる余裕を、ポロポロと落としてしまうのですね。
思い出の箱を開けるために、毎回手前の荷物をすべて動かし、踏み台を用意する。
その手間がかかるからこそ、毎回重い箱を動かすという大きなお仕事が重なり、ご家族の歴史を振り返るのを「またの機会にしよう」とそっと見送るようになることが起きてしまうのです。
大切な思い出を守るための箱が、休日にご自身がゆっくりお茶を飲んでひと休みするための大切な時間と広さを引き受けてしまうことは、ご自身の優しさが引き起こした、とても静かなすれ違いです。
視線が遮られることで見えなくなる、今の家族の表情
ご家族のためにとリビングに立派な棚を置き、きれいに並べる。その真面目な行動は、立派です。
しかし、ご家族を思って収納を増やすその立派な頑張りが、皮肉なことに、お部屋ですれ違うときの歩きにくさを生み、ご家族の自然なおしゃべりや笑い声を、少しずつ飲み込んでしまうとわかっているのです。
壁のように並んだ棚は、同じ部屋にいるご家族の表情を見えにくくします。
お料理をしながらお子様の顔を見渡すことができず、「話を聞いてくれない」という寂しさを生む原因になってしまうこともあるのです。
大切なお品を守るために「走らないでね」「ぶつからないように気をつけてね」と声をかける毎日。
その温かい思いやりが、結果として、ご家族がのびのびと動くことや、大きな声で笑い合うことを少しずつ制限しているとしたら、それは決してご自身の望んだ姿ではないはずです。
守る場所を外へ移し、いつでも振り返れる身軽な仕組み
見えない家賃を手放し、自然な光と風を取り戻す
今の住まいの広さを変えることは、簡単ではありません。
だからこそ、普段は開けない箱の管理を、外部の環境へお任せするという選択があります。
お住まいの広さに関する研究でも、普段は開けない箱を家の外へお引越しさせることが、この『見えない家賃』の重さを一番スッと軽くしてくれる、とても自然でまっすぐな方法だとわかっているのです。
視界を遮る高い棚や箱を家の外へ移す。
それだけで、お部屋の中にぽっかりと、何もない床の広さが生まれます。
その何もない広さこそが、ご家族それぞれが気兼ねなく手足を伸ばせる自分の場所となり、お家への安心感を育てていくのです。
手元でいつでも眺められる、新しい思い出の楽しみ方
箱がなくなり、空間の余白が戻ってくると、窓からの自然な光が部屋の奥まで優しく届くようになります。
ご家族がほどよい距離で、お互いの表情を見ながらおしゃべりできる配置も叶います。
預けた思い出の品々は、スマートフォンの画面を通して、いつでも手元で、ご家族と一緒に笑い合いながら振り返ることができます。
重い箱を動かす必要もありません。
目の前の笑顔のための余白か、奥深くの箱を守り続けるか
大切なお品を、ご自身の手の届く場所で完璧に守り続けることは、本当に立派な愛情の形です。
しかし私は、その素晴らしい真面目さが自分自身の時間と空間をすり減らしていることに気づき、歩みを止めました。
そして、思い出の品を相応しい外部の環境へお任せすることで、何もない床の広さと、いま目の前にいる家族がのびのびと過ごせる穏やかなリビングを取り戻しました。
このまま奥深くに箱を積み重ねて、ご家族の歩むための広さをお渡しし続けるか。
それとも、守る役割を別の場所へ任せ、いつでも思い出を振り返れる身軽さと、大きく息を吸い込める今の暮らしの余白を選ぶか。
どちらの毎日をご家族と一緒に過ごしたいか、決めるのは他の誰でもない、あなたご自身です。