重たいアルバムに本棚の特等席を譲り、今日読みたい本を床に重ねる優しいあなたへ

重たいアルバムに本棚の特等席を譲り、今日読みたい本を床に重ねる優しいあなたへ

家族の歴史が詰まった分厚いアルバム。

それを、いつでも手に取れる本棚の一番良い場所に並べておくのは、過去の思い出への深い愛情と誠実さの証拠です。

ですが、その素晴らしい優しさと責任感ゆえに、今あなたが読みたい新しい本を置く場所がなくなり、テーブルの上や床に資料が積み上がっていく光景に、ほんの少しだけ窮屈さを感じてはいないでしょうか。

家族の歩みをすぐに振り返れる場所に置く誠実さ

大切な記録に一番良い席を譲る深い愛情

家族の大切な歩みを、目の届かない場所に追いやることはできない。その思いは、とてもあたたかく、真面目な愛情の形です。

だからこそ、「捨てられない」「大切に守りたい」という優しさから、すべての思い出を家の中で抱え込おうとする真面目な選択が、結果として、今まさに目の前で成長している子どもが手足を伸ばして遊ぶための空間を諦めざるを得ないという、両立不可能な状態を生み出しています。

あなたのその愛情の深さそのものが、今の家族がゆったりと過ごすための余白を、少しずつ窮屈なものへと変えているのです。

過去のアルバムを守るほど、今のあなたが読む本が置き切れなくなる理由

ひとつの場所を何かに使うと、別のことには使えなくなる物理的な事実

本棚の出し入れしやすい高さは、家の中でもとても便利な場所です。

『国民経済計算体系(SNA)1.60』という経済の基準でも示されているのですが、ある場所をひとつの目的に使ってしまうと、そこは同時に別のことには使えなくなってしまうのですね。

また、1990年代以降に提唱されたポール・クルーグマンさんたちの空間に関する経済研究にもあるように、限られた家の中にモノを詰め込もうとすればするほど、その大切な『1メートル四方』の広さを維持するための手間や負担は、気づかないうちに跳ね上がってしまうのです。

いつでも見られる状態が、無意識に頭と時間の余裕を使っている

環境の心理学の研究でも言われていることですが、『いつでも手に取れるように』と目の届く場所にモノを置き続けてしまうと、視界から入ってくる情報が多すぎて、自分でも気づかないうちに頭の中のエネルギーを使い果たしてしまい、休日の穏やかな時間を静かに削り取ってしまうのです。

大切な品を傷まないようにと定期的に防虫を気にかけ、収納のパズルを解くように整理を繰り返す時間は、アルバムのホコリを払い、本棚の隙間をパズルのようにやりくりするために使っている、休日の穏やかな朝の時間として蓄積します。

そしてそれは、本来なら子どもと一緒に笑い合えたはずの時間や、今のあなたが読みたい本を置くための便利なスペースを、少しずつ過去の品物に譲り渡している状態を生み出しているのです。

大切な記録を外の静かな環境へ委ね、今の本棚に余白を作る

思い出のお休み処を外に用意するという選択

過去への深い愛情を手放す必要はありません。

記憶や大切な記録を、あえて自分の手の届く場所から少しだけ離して、外部の整った環境に委ねてあげる。実はこれ、認知科学の分野でも、私たちの心の容量を増やし、今を生きるための余裕を生み出してくれる、とても理にかなった方法だと考えられているんですよ。

過去の大切な品物を美しいまま保つことと、今の家族が手足を伸ばせる空間の両方を、どちらも諦めずに守り抜くための新しい預け先を取り入れることは、今の生活を豊かにするためのひとつの答えです。

読みたい本だけが並ぶ、今を生きるための特等席

1979年にジェームズ・J・ギブソンさんが提唱した『環境が人の行動を引き出す』という知覚の法則があります。

この法則が教えてくれるように、モノがなくすっきりと片付いた広い床という環境を用意してあげること自体が、子どもたちに『ここは気兼ねなく走り回っていいんだよ』というメッセージを自然と伝え、のびのびとした行動を引き出してくれるのです。

過去の品物を守るために収納の箱を増やし続けることは、家族がリビングで肩をぶつけずにすれ違うときのゆとりや、休日の朝に深呼吸できる空間という、何にも代えがたい「選ばれなかったもうひとつの生活の価値」を、休日の朝に深呼吸をして新しい知識を入れるための空間を、別の用途で使い切ってしまっていることにつながるという現実があります。

過去の記録に特等席を譲り続けるか、今のあなたのための余白を取り戻すか

私はかつて、あなたと同じように愛情の深さゆえに空間のやりくりに追い詰められました。

そして今は、外部の安全な離れに思い出を預けるという選択をしたことで、今の家族の笑顔と、私自身の本棚の余白を取り戻しました。

このまま過去の大切な品物に本棚の特等席を譲り続け、今日読みたい本をテーブルの隅に重ねる日々を選ぶか。

それとも、思い出の保護を相応しい環境に委ね、今を生きるあなた自身のインプットのための広々とした空間を取り戻すか。

どちらの景色をご自宅のなかに広げるかは、あなた自身の自由です。