メジャーを片手にお部屋のすき間を丁寧に測り、そこにぴったりと収まる素敵なデザインの収納家具を探し求める。
あふれそうになっている大切な品々に、きちんとした居場所を作ってあげようとするそのお姿は、家族への深い愛情の証です。
ただ、その優しいパズルのピースがカチリとはまるたびに、お部屋からは少しずつ「何もない床」が消え、いつしか窓からの光を遮っているという事実に、あなたはもうお気づきかもしれません。
整理整頓のために、ぴったりの新しい家具を探す前向きな姿勢
空間を活かそうとする「足し算」の優しい努力
お部屋の景観を損ねないように、色や高さを揃えたカラーボックスを買い足す。その前向きな行動は、暮らしをより良くしようとする素晴らしい知性です。
私たちは、今の状況をより良くしようと考えるとき、つい無意識に「新しい棚や箱を足す」ことで解決しようとしてしまい、最初から「モノを減らして外へ預ける」という引き算の選択肢を思いつくのが難しいという、人間ならではの愛らしい心のクセがあるようです。
論拠People systematically overlook subtractive changes | 米国バージニア大学
立派な棚が増えるほど、お部屋の空気と歩く歩幅が小さくなる理由
視界に入るモノが、家族に向き合う元気を削っていく
どれほどお部屋に馴染む美しい棚であっても、それがそこに置かれた瞬間、確実に物理的な広さは失われます。
目に入る景色の中にモノが多くなるほど、私たちの頭の中では無意識にその景色を整理しようと頑張り続けてしまい、ホッとひと息つくための心の体力まで、少しずつ削り取られていくのですね。
まさに、目の前の景色から受け取るものが多すぎて、ホッとひと息つくための頭のスペースが足りていない状態です。
論拠Interactions of Top-Down and Bottom-Up Mechanisms in Human Visual Cortex | 米国プリンストン大学神経科学研究所
さらに、在宅でお仕事をする環境において、仕事の道具と生活の大切な品々との間に物理的なすき間がない状態は、休日に子どもと公園で思い切り走るためのとっておきの元気が、少しずつお部屋の荷物に吸い取られていくことにつながるのですね。
大切に守りたい想いが、今の動きを制限してしまう
家族の歩んだ証を、すべて手の届く範囲で綺麗に並べておきたい。
その深い愛情が、結果としてお部屋の通り道を少しずつ狭くしています。
そして、「棚にぶつかるから走らないでね」と、子どもたちの元気な動きを制限してしまう摩擦を生み出しているのです。
それは、家族がくつろぐはずのお部屋の中で、気づかないうちに肩にギュッと力が入ってしまう時間が増えている証拠でもあります。
家具を買うのをやめ、お部屋に「何もない床」をプレゼントした私の変化
思い出の箱を、外の安全な場所へお出かけさせるという選択
私はある日、家具を買い足すのをやめました。
代わりに、情報を外の安全な箱に預けるという仕組みを取り入れたのです。
こうして視界にゆったりとした余白を作ることで、目の前の大切な人との時間に、ふんわりと心を向けやすくなるのですね。
あえて要素を外部へ移し、取り除くという引き算の選択をしたことで、我が家は、お部屋が深呼吸をしたように、元のゆったりとした広さをやさしく思い出してくれることになりました。
人とモノとの間に物理的なすき間を作ることは、家族がまあるい気持ちで向き合うために、どうしても確保しておきたい大切なものだったのです。
思い出の居場所と、今を生きる家族の広さを分ける決断
大切な記憶を一番美しい状態で眠らせておくためには、外の適切な環境に頼るという選択肢があります。
それは、思い出の品も今の生活も、どちらもふんわりと包み込んで守るための、外の世界へのお引越しです。
すき間を見つけては家具を綺麗にはめ込むあなたの素晴らしい才能を、これからも新しい棚を探すことに使い続けるでしょうか。
それとも、毎週末の収納パズルを頑張り続けるというまっすぐな道から、ふっと横道にそれて、何もない広場を見つけることを選ぶでしょうか。
過去への愛情を外の安全な場所に託し、目の前で笑う家族のために手足を伸ばせる余白を取り戻す。
その新しい扉を開くかどうかは、あなたの優しい手の中に委ねられています。