ご家族の思い出を少しでも良い状態で残したい…。
その優しいお気持ちが、お家の中で一番風通しの良い窓際を段ボール箱で埋め尽くし、今を生きるご家族が座る場所を少しずつ狭くしていることに、お気づきでしょうか。
一番日当たりの良い場所を、大切な思い出に譲る優しさについて
カビや湿気から守りたいという、まっすぐな愛情
ご家族の大切な品々を、ご自身の手の届く場所で大切に保管しようとなさるそのお姿は、とても誠実で美しいものです。
それは、大切なものを自分の一部のように感じ、手放したくないと思う自然な心の働きから来ています。
大切にしたいと願って一度お家にお迎えしたお品ほど、『いつかまた』と手放すことに大きなためらいを感じてしまうのは、ご家族を想う、とても自然で優しい心の働きなのですよ。
目の届くところに置くことで得られる安心感の裏側
いつでも見える場所に置いておきたいというお気持ちは、単なる愛着だけではありません。
ご家族への愛情が深いからこそ、そのお品を手放そうとする時、私たちは心がギュッと締め付けられるような、とても大きな負担を感じてしまうのですね。
ただ、人が一瞬のうちに受け取れる情報にはどうしても限界があります。
お部屋にたくさんの箱が置かれているだけで、脳は常にいっぱいいっぱいの状態になってしまうのです。
論拠Neural mechanisms of decision making in hoarding disorder | 米国イェール大学・米国国立医学図書館
高く積まれた箱が、静かにリビングの光と風を遮っている現実
ご家族のための空間づくりが、お部屋を窮屈にしてしまう理由
思い出の品をきれいに並べようとする真面目な努力が、かえって目に飛び込んでくるものを増やしてしまいます。
その結果、ご家族がゆったりとくつろぐための大切な力が、知らず知らずのうちに使われてしまっているのです。
大切に積み上げられた箱であっても、それが視界に入るたびに『まだ守り続けなければいけない』という無言の合図となり、ご自身が心から休まるための静かな時間を、少しずつ削り取ってしまうのですね。
これが、大切なものを守り抜こうとするあまり、常に見張りをしているように気が張ってしまい、ご自宅で心からくつろげない状態を作り出しているのです。
休日のたびに箱を動かすことで削られていく、今日の体力
お部屋をきれいにしようと箱のパズルを繰り返すほど、お部屋を綺麗に整えようと頑張れば頑張るほど、ご自身の座る場所や温かいお茶を飲む時間がなくなっていくことを抱え込むことになります。
ご家族を大切にする優しさが、かえって日々の重たい疲れとしてお体に溜まっていくことにも繋がります。
ものの置き場所を考えたり、風を通したりする日々の小さな判断の繰り返しは、頭の疲れを引き起こします。
そして、今日ご家族と笑顔で過ごすための心のゆとりを、少しずつ削り取っていくのです。
思い出には専用の穏やかな場所を。そして、今日の食卓に明るい日差しを
カーテンを大きく開けられる、真っ直ぐな床を取り戻すために
お部屋の中にあるものを減らし、視界をスッキリさせることで、脳は過度な刺激から解放されます。
目の前にある箱の数だけ、今日ご家族と笑い合うための体力が少しずつ削られていくことを減らすことができるのです。
お品物を今暮らしているお部屋から離すことで、毎日迫られる管理のお世話を減らすことができます。
それは、ご自身の暮らしを自分で決めるという、とても大切な感覚を取り戻すことでもあります。
何もない空間が、ご家族の呼吸を深く穏やかにする
お部屋に生まれる何もない空間は、ただの空き場所ではありません。
それは、これまで『大切なものを守らなければ』と張り詰めていた心の緊張をふわりと解きほぐし、お部屋を本来の穏やかな広さに戻してくれる、とても自然で優しい変化なのです。
視界に入るものが少ない穏やかな環境は、日々の生活で疲れた頭を休ませ、家族を想うがあまり、知らず知らずのうちに肩に力が入って深呼吸が浅くなっている状態を和らげます。
そして、新しく考える力をゆっくりと満たしてくれるのです。
思い出のために窓を塞ぎ、薄暗いお部屋で静かに息をひそめて過ごし続けるのか。
それとも、大切な過去の記憶はそれにふさわしい静かな離れに預け、ご家族が笑い合うリビングに明るい日差しと真っ直ぐな床を取り戻すのか。
私は後者を選び、子どもたちが大きな声で笑いながら走り回れる、何もない床の広さを取り戻しました。
あなたがどのような選択をされるのかは、あなたの自由です。